近年、南関東に定着した移入貝類

 

黒住耐二°(千葉県立中央博物館)・岡本正豊(千葉県柏市)

 今回は、最近、筆者らの確認した移入貝類について簡単に報告したい。
 ウスカラシオツガイ シオツガイを小形にしたようなイワホリガイ科の一種で、東京湾や瀬戸内海で確認されている。南関東では、少なくとも1990年代の初頭には東京湾の湾奥部で生息が確認され、現在では浦賀水道(東京湾口)にまで、その分布を広げている。本種は、セイヨウイワホリガイPtericola (Rupellaria) lithophagaとされることもあるが、日本に移入されたものは穿孔することはなく、近似の別種だと考えられる(セイヨウイワホリガイはクシケガイ亜属の模式種)。最終的な種小名の決定にはまだ暫く時間がかかると思われるので、この種には、波部先生が考えておられたウスカラシオツガイの和名を与え、暫定的にP. sp. cf. lithophagaとしておきたい。
 
 ホンビノスガイ アメリカ合衆国などで食用として知られるマルスダレガイ科の二枚
貝で、1990年代中頃に、東京湾湾奥部の人工海浜で小形の幼貝が確認された。朝鮮半島由来と考えられるカワニナ類の一種 1990年代後半に茨城県の常陸利根川の数カ所で確認されたもので、殻底の螺肋数が少なく、縦肋を持ち、螺層がやや膨らむことから、日本に土着している種とは異なる。朝鮮半島から報告されているSemisulcospira forticostaか、その近似種と考えられる。


Kurozumi, T. & M. Okamoto: Some newly introduced molluscs in southern Kanto
Region.