Aplysiaアメフラシ属における消化管の形態比較

 

佐々木哲朗・土屋光太郎・瀬川進(東京水産大学)

 

アメフラシ属は無楯目アメフラシ科に属する後鰓類で、主に大型海藻を餌とする植物食性を示す。本属の消化管の構造および機能は、大西洋に分布するA. punctataで詳細に研究されてきた。しかし、分類学的研究では、伝統的に歯舌や顎板、肝盲嚢などの限られた形質のみ記載される傾向があり、その他の形質に関する各種の形態的特徴は把握されているとは言い難い。本研究では、アメフラシ属の消化管の形態を明らかにするために、本邦産アメフラシ属5種について砂嚢および腸の比較解剖を行った。砂嚢は機械的消化を担う器官で、内部にクチクラ質から成る多数の咀嚼歯を保有する。咀嚼歯の歯数、サイズ、分布はそれぞれの種の特徴を表した。腸は中腸腺表面を半ば埋もれた状態で旋回し肛門へと至る。本研究では3タイプの軌跡パターンが見出され、それぞれのパターンは種内において安定した形質である事が明らかとなった。

 

Sasaki, T., Tsuchiya, K. & Segawa, S. : Comparative anatomy of the alimentary canal in Japanese species of Aplysia (Gastropoda: Opisthobranchia)