漸深海底の沈木上に生息する腹足類については,断片的に多くの深海底の貝類調査論文でふれられてきた。日本で漸深海底の沈木上に生息する腹足類について統合的に研究報告された例はHasegawa ( 1997 ) のみである。Hasegawa ( 1997 )では,駿河湾の漸深海底より21種の腹足類が記録され,古くから和名だけが知られていたクボタシタダミを含む12新種が記載された。演者は1990年より遠州灘から九州南岸の太平洋側の水深120から400mの海底より底引き網,ドレッジ等で多くの沈木を採集した。採集された沈木は,細かく分解後海水で洗浄し,1mmメッシュでふるい試料とした。試料を実体顕微鏡下でソーティングし多くの貝類を得た。そのうち腹足類は30種以上を記録した。それらを検討した結果,サザエ科1種,ワカウラツボ科1種,エゾバイ科1種,ミノムシガイ科1種,トウガタガイ科1種,所属不明の1種の少なくとも6種の未記載種を確認した。現在詳細については研究中であるが,沈木上の珍奇な腹足類について予報的に紹介したい。
Kimura, S.: Unique fauna of sunken wood-associated gastropods collected from bathyal depths of Pacific side south-western Japan.