異型発生か隠蔽種か:コマユミノウミウシの場合
姉帯勇規°・平野弥生・平野義明(千葉大学海洋バイオシステム研究センター)

コマユミノウミウシ Cuthona pupillae(Baba,1961) は、北海道から九州まで、日本全国に広く分布する。本種の発生様式には、大卵(卵径約150μm)で直接発生を行うものと、小卵(卵径約98μm)でプランクトン栄養型幼生を経る間接発生をするものの2種類が観察されている。しかし、これらの異なる発生様式をもつものが、同一種であるのか、または異なる二つの近縁種であるのかは、明らかにされていなかった。
 本研究では、この異なる発生様式を持つ個体同士を交雑させ、その繁殖可能性を調べることによって、これらの個体が同一種のものであるか否かを検討した。その結果、正常な発生を示すF1が得られた。また、そのF1同士を交配させたところ、F1も繁殖可能性を持つことが明らかとなった。これらの実験によって得られたF2の発生様式は、小卵(卵径約111μm)で直接発生を行うという注目すべきものであった。

Anetai, Y., Hirano, Y. M. & Hirano, Y. J.: Poecilogony or cryptic species -- the aeolid nudibranch Cuthona pupillae?