本邦新第三系からEpilucina californica (ツキガイ科) の初産出記録
栗原行人゜（筑波大・生命環境）・中島　礼（産総研）

Epilucina californica (Conrad)は北米西岸に現生するツキガイ科二枚貝類である．現世ではカリフォルニア?バハ・カリフォルニアの浅海に生息し，その化石記録はカリフォルニアの中新統?更新統に知られている．今回，本州の新第三系から本種が初めて見いだされたので報告する．E. californicaの産出が確認されたのは岐阜県の瑞浪層群明世累層（前期中新世）および福島県の仙台層群大年寺層（後期鮮新世）であり，北海道の駒畠層（後期鮮新世）からは保存不良のEpilucina sp.が産出した．福島県の久保田層（後期中新世）から記載されたLucina nipponica Nomura and Hataiおよび千葉県の名洗層（鮮新世）から記載されたLucina japonica Ozakiは，模式標本を検討した結果，E. californicaのシノニムと考えられる．Epilucina属の古第三紀における化石記録は北米西岸に限られることから，E. californicaは前期中新世に北東太平洋から北西太平洋に分布範囲を拡げ，北西太平洋では鮮新世末に地域的に絶滅したものと考えられる．

Y. Kurihara and R. Nakashima: First fossil record of Epilucina californica (Bivalvia; Lucinidae) from the Tertiary of Japan.