霞ヶ浦におけるヒメタニシの性比の変化
西脇三郎゜・升 秀夫(筑波大医療短大)・花輪俊宏(湘央学園)

 
 霞ヶ浦に生息するヒメタニシには♂より♀が多い性比がみられたことを先に報告したが      (平成13年度大会)、調査地点の設定、調査個体数と採集方法を再検討し、@ヒメタニシの性比は基本的には♂:♀=1:1であるか、A霞ヶ浦湖内に生息するヒメタニシの性比に変化がみられるか、B性比は季節的に変化するかの3点について精査した。この調査では霞ヶ浦の土浦入りの下水処理水排水口の近くに位置する石田、生活排水流入が顕著である備前川河口の蓮河原、水道水取水口から200mに位置する高山、農薬流入の多い園部川河口の小川の霞ヶ浦湖内の4地点とコントロールとして湖水を利用する湖岸の養魚場において2001年4月から2002年3月までの1年間、毎月半ばに鋤簾を用いてヒメタニシを採集した。雌雄の判別はペニスの有無によって行った。その結果、1年間の総個体数の性比は、養魚場♂:♀=9343:9451=1:1.01、石田♂:♀=442:643=1:1.45、蓮河原♂:♀=451:658=1:1.46、高山♂:♀=433:570=1:1.32、小川♂:♀=947:1059=1:1.12であった。統計学的検定の結果、養魚場の性比は1:1とみなされ、ヒメタニシの性比は基本的には1:1と判断された。湖内の4地点では性比は1:1ではなく♀が多いと判断され、特に土浦入り3地点で性比の変化が顕著であった。これは土浦入りで化学物質汚染が進んでいることと関係があるのではないかと推測され、生物多様性の回復や水道水への影響の問題が懸念される。養魚場、湖内4地点とも性比に季節的変化はみられなかった。

Nishiwaki, S., Masu, H. & Hanawa, T. : Changes in the sex ratio of Sinotaia quadrata histricus in Lake Kasumigaura.