新潟県粟島におけるオオコシダカガンガラ稚貝の成長と生息場所 伊藤祐子°・林 育夫(日本海区水産研究所)
オオコシダカガンガラは日本海側の浅海岩礁域でサザエとともに多く出現する植食性巻貝で,食味の良さから地方的に人気のある太平洋側に生息するバテイラとは亜種の関係にある。本種の生息状況の調査により大型個体は岩盤や大型転石表面に一般的に見られるが,小型個体がどのような場所に出現するかは不明な点が多かった。そこで稚貝の生息場所を調べるとともに,定期的に稚貝の採集を行ってその成長も調べた。
殻径10mm以下のオオコシダカガンガラ稚貝は,潮通しがよく,長径5〜15cm程度の石が何層かに重なっている石の裏に多く見つかった。大型個体の出現傾向とあわせると,オオコシダカガンガラは成長に伴い,住み場を小石から転石へ,さらに大型の石や岩盤の表面へと移していくと考えられた。粟島北部に設置されたアワビ礁付近で4か月ごとに稚貝を採集し,その殻径組成を調べた結果,6月に殻径2〜3mm程度の個体が1年後には12〜13mm程度に成長することが推定された。大型多年生海藻の見られないアワビ礁付近と,これらの海藻が繁茂する粟島東岸から同時期に採集した稚貝の殻高組成には大きな違いは見られないことから,粟島周辺に生息するオオコシダカガンガラ稚貝の成長は場所による差がほとんどないと考えられた。
Ito, Y. and Hayashi, I. : Growth and habitat of juvenile Omphalius pfeifferi carpenteri in Awa-shima Island, Niigata.