西日本で見つかったマメシジミについて
家山博史゜(愛媛大)

 殻長2mmに満たない小型のマメシジミが兵庫,山口,香川,宮崎で見つかっている。殻は横長の卵形で,背縁に肩は見られず,後縁は截断状にならない。殻頂は広く,ほとんど突出せず,前端から殻長の約55%に位置する。殻表は白色〜薄褐色で,光沢があり,浅く細かい同心線がある。香川県大野原町の標本について殻内面及び軟体部を調べることができたので報告する。A板は狭く,緩やかに弧を描き,靱帯は内在(enclosed)で長く,後部はほぼA板幅まで広がる。右主歯C3は薄く直線的で,後部は広がり分岐する。左主歯C2はA板下縁から立ち上がり,台形をしていて,上端は背側に曲がっている。C4は長方形の薄板でA板を斜行する。内外套膜筋の筋痕は套線から離れている。入水開口はなく,pedal slitはその部分まで開いていないのでpresiphonal sutureがあることになる。外鰓はなく,内鰓のascending lamellaは非常に小さい。これらの特徴から,香川の標本はSubgenus Neopisidium Odhner 1921に属するマメシジミであることが分かった。本種は靱帯や鰓の特徴からPisidium conventusに似ているが,conventusは筋痕が套線から離れていない点で,また,Mori(1938)の記載したP. conventus akkesiense (模式産地:北海道厚岸)は背縁に明瞭な肩があり,後縁は截断状になっている点で本種と異なっている。

Ieyama, H. : Pisidium (Neopisidium) sp. from West Japan.