真の Assiminea とはどんな属か:模式種 A. grayana の形態の再検討(新生腹足上目:
カワザンショウ科)
福田 宏°・鈴木田亘平(岡山大・農・水系保全)
Assimineidae カワザンショウ科の模式属である Assiminea Fleming, 1828 は,これまで全世界の温帯・熱帯域に広く分布するとされ,数百種がこの属名のもとに記載されている。しかし,その模式種 A. grayana Fleming, 1828(西ヨーロッパ産)の解剖学的検討は必ずしも十分とは言えず,同属とされた他の種との比較もほとんどなされたことがない。そこでA. grayana の形態を再検討した結果,以下の特徴が明らかになった:1) 胎殻の最初の0.5巻は網目状彫刻をもつが,その後の約2巻は螺肋をもつ; 2) 外套膜の内側,肛門の近くに分泌腺がある; 3) 歯舌中歯と側歯の歯尖数に極端な変異がみられる; 4) 陰茎には数個の顕著な疣状突起が縦列をなす; 5) 雌の貯精嚢は常に黒色に彩られる。これらの特徴を共有する種は,現在のところ日本の "A." parasitologica Kuroda, 1958 ムシヤドリカワザンショウ1種のみである。従って,従来Assiminea とされてきた A. grayana 以外の種は,その大半が属位を変更されねばならない。ムシヤドリカワザンショウも胎殻の形態等が異なるため,Assiminea に近縁な新属として扱うべきである。
Fukuda, H. & Suzukida, K.: The relationships of the genus Assiminea on the basis of the anatomy of the type species, A. grayana (Caenogastropoda: Assimineidae).