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貝類の本の紹介

姫路市立水族館 ⑤ 兵庫県のかたつむり

2020年2月10日

姫路市立水族館 ⑤ 兵庫県のかたつむり
増田 修 著(姫路市立水族館)

各博物館や水族館などが刊行している特別展示の解説書や図録集は時々目にするが,今回は姫路水族館が本年に出した冊子を紹介しよう。兵庫県での類似書は,鈴木(1979)や西宮市貝類館(2009)にあるが,多数の写真を駆使して最新の情報がつまった編集になっている。兵庫県を代表するハリママイマイと貝殻に変異が著しいナミマイマイのカラー写真を表紙にした本書は,pp.2-16 までは,カタツムリの概説(形,巻き方,模様と殻皮,軟体),生態(繁殖,食性,すみ場所,飼い方)を解説。pp. 18-54 の大半は「兵庫県のかたつむり」として,鮮明な写真と共に簡潔に解説されている。巻末に兵庫県陸産貝類目録が編纂されて,28科145種がリストアップされており,しかも最新の分類体系の学名が示されている。かたつむりの殻色,色帯,模様には変異があるのが常であるが,本書ではハリマイマイ(セトウチマイマイ)(pp. 7, 46) ,ナミマイマイ(pp. 43-44)の例をきれいな写真で表示していることも有益である。日本陸産貝類研究史からみれば,神戸は貿易港として早くから開港したために多くの外国人が往来し,その収集品が欧米にもたらされ,研究の結果多くの種が神戸産として発表された。すなわち,「神戸」などをタイプ産地とする種類が極めて多いことなどが兵庫県の特筆すべき点で,29種に達している。和名からもわかるが,それらの一部を列記すると,ハリマムシオイ,アワジギセル,ハリマナタネガイ,ハリマキビ,コウベマイマイ,アワジオトメマイマイ,ハリママイマイなどである。また,兵庫県は,平瀬與一郎(1859-1925),大上宇市(1865-1941),矢倉和三郎(1874-1944),黒田徳米(1886-1987),東 正雄(1912-2001),波部忠重(1916-2012)などの各先生を輩出した県でもあるので,これらの先生方のゆかりの陸産貝類(例:オオウエゴマガイ,マヤサンマイマイなど)も多数みかける。上記のような「かたつむり」をめぐる採集史に触れてあると,より親しみ深い記述ができたかもしれない。さらに欲を言えば,シタラ科やベッコマイマイ科などの微小種(pp.33-33)や各種の写真にスケールバーがあれば,同定をする際に便利だったかもしれない。近年は県下の陸産貝類相の調査も活発に行われており,未同定種と思われる種(sp. として表示)が判明して和名の仮称がされている(例:ヒメゴマガイ,スハダナメクジ,ヒメコウロマイマイ)ことも見逃せない。本誌で先に紹介をした「兵庫県版レッドデータブック2014(貝類・その他無脊椎動物)」と併用して利用することをお勧めしたい。

引用文献

  • 鈴木章司. 1979. 神戸の自然 2, 神戸のかたつむり — 神戸の陸産貝類 —. 64pp. 神戸市立教育研究所, 神戸.
  • 西宮市貝類館. 2009. 西宮市貝類館開館10周年記念, 貝はともだち — 西宮でみられる貝 —. 82pp. 西宮市貝類館, 西宮.

(紹介者:湊  宏)

発行者ウェブサイト:
https://www.city.himeji.lg.jp/aqua/

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