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貝類の本の紹介

美しく不思議なウミウシ

2020年2月10日

美しく不思議なウミウシ
今本 淳 著(二見書房)

ちりぼたん(43(1-4):1-22)に掲載された「南西諸島の後鰓類」の著者の一人である今本 淳氏から上記のウミウシの写真集を献本された。著者には10年あまり前,氏が奄美に移住する直前に,文献調査で訪れていた京大瀬戸臨海実験所で初めてお会いした。以来,ウミウシに魅せられて奄美大島をフィールドとして活躍されている。ウミウシを愛おしいまでに活写して今日のウミウシブームを演出した張本人で,今回で3冊目の出版であるとは驚きである。1ページから眺めていくと,海の宝石と称されるこれら“ウミウシ”の怪しいまでの色彩と造形美にうっとりである。撮影場所は奄美大島が主体であるが,奄美に移住する以前に伊豆,越前,真鶴,八丈島で撮影した76点(種)のウミウシも本書には登場する。写真集では画面いっぱいに引き伸ばされた生体を見ることになるが,実は画面の右下や左下には実際の大きさをシルエットで示されているので,正体はいかに小さいかがわかる。すべて見た後に,原寸大で大集合(その1~3)を眺めると,その大きさや多様性が理解できるから面白い。わが国には約1,200種類のウミウシがいて,まだ未同定種などが多々ある由なので,本書では「属の1種」,「仮称」などの種名も拝見できる。コラムとしては,「ウミウシQ & A」,「ダイビングや磯でのウミウシ探し」があって,著者の経験が語られている。

ウミウシに魅せられてから,「日本で見られる全てのウミウシを撮影する」という目標を掲げた。それから13年半で約550種を撮影し,当初の目標の半分に達した時点での今回の3冊目の出版となった。撮影した写真のうち,昨年から導入した新しいウミウシ撮影用カメラシステム(ミラーレス一眼レフデジタルカメラ)で撮影したものが約3分の2を占めているという。そんな撮影機材の紹介がされていることも本書の特徴である。目標の中間点に立ち,日本産ウミウシ全種撮影の終着点に向かって,さらなる意欲を抱いている著者の活動とこれからの努力に期待をしたいと思う。

なお,今本氏のホームページ「私が出会ったウミウシたち」(http://www.umiushi.info/) を開いても,さらに美しいウミウシの仲間に遭遇することができる。

(紹介者:湊  宏)

出版社ウェブサイト:
http://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576140247

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